行き先も見えず、多岐亡羊

おじさんがダラダラ書いている日記的なモノ

働き方は変わるのか

 

退屈を持て余した土曜日の午後。ゴロゴロとテレビ番組を見ていたら、なにやら変わったドラマを放送していた。

「 スナイパー時村正義の働き方改革
CBCテレビ制作、脚本 : 政池洋佑、出演 : 高杉亘 高田夏帆
【 未見で、視聴予定のある方は読まないように 】
深夜に放送されていたドラマの再放送のようで、30分番組 × 全3話一挙放送。最近、このフォーマットのミニドラマを見かけるけど、何だろう?

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建設現場作業員の男が一人、廃倉庫に入ってくる。男は階上の窓際で抱えていた工具入れの蓋を開き、中からライフルを取り出した。本作の主人公・時村は日本政府の秘密組織JIAの腕利きのベテランスナイパー。丁度油の乗った年齢で、仕事への情熱と責任に溢れている。いつものように、黙々と一人で仕事を進めていた。しかし、そんなところにJIA人事部の女性職員、早川が現れた。どうやら時村は、成績はトップだが残業時間も多いようだ。彼女は言う。「 時村さんの働き方を改革しにやってきました。これからは世界の平和を残業ゼロで守ってください 」。

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「 スナイパーと事務員 」 という非現実的な組み合わせの面白さを描いた作品。二人は同じ集団に所属しているが、考え方、価値観、バラバラ。時村の仕事はJIAの最前線とも言えるもので、いわば花形。世界中に派遣され、実績は豊富。その自尊心からか、時村は自分の武勇伝を聞かせたがる。しかし、相手はイマドキ女子。おっさんの武勇伝など興味は無い。標的の観察能力に優れた時村には、それが分かってしまう。
ドラマの設定が突飛なため、ドラマ自体は普遍的で、人物描写はステレオタイプ。仕事一筋、働くことに生き甲斐を見出す昭和的アナログ中年と仕事とプライベート区切りを付け、デジタル機器を駆使して、何事も効率的に考えるイマドキ女子。仕事中は煙草を我慢した時村の仕事後の一服すらも、「 スモーキングハラスメント 」 と早川に拒否される。二人の世代間ギャップをコメディタッチで描いている。

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時村は納得したフリをして誤魔化そうとしたが、早川はタブレットを置いて仕事を始めた。現場に残って時村の5時退社を見届けるつもり。JIAはテレワーク推進中とのこと。
そして、退社時間の5時になった。時村はもちろん反発する。「 ターゲットは凶悪なテロリスト。オレが仕留めないと、大変な事件が起こるかもしれない。緊急事態ってことで残業しても良いだろう。 」
しかし、早川も退かない。「 残業でも人は死ぬんです。 」夜勤のスナイパーに引き継ぐとのこと。これはオレの仕事、と粘る時村の頭に銃を突きつけ、有無を言わさず帰宅を迫る。時村は渋々従う。
翌朝9時出勤。もちろん、時村は早目の出勤。この日は動きがあった。ターゲットが姿を現した。しかし、その日は豪雨。視界不良。司令部から作戦中止が伝えられる。しかし、時村は神経を針のように研ぎ澄ませ、引き金を引いた。銃弾は標的を的確に捕らえた。
時村は振り返る。「 いつもの俺なら絶対に撃たない。しかし、今日の俺は冴えていた。なぜなら、家でしっかり寝たからだ。 」

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時村は勘と経験重視、現場の調査なども一人でこなす。ネットの情報に頼らず、現場を歩いて調査。報告書も手書き。甚だ非効率。早川はそんな考え方に否定的。時村に、時短と人を利用した効率化を促す。早川には想いがある。「 何かの映画で 『 事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きているんだ 』って台詞がありましたよね。あれ、少し違和感があって。会議室の人間だって、現場のために戦っている。私は人事部の立場で世界の平和に貢献しようと思っています。 」
一方、早川も時村に学ぶ部分もある。経験の蓄積に基づいたノウハウは軽く見るべきではない。アナログにはアナログの良さがある。古いものには受け継ぐべき良さがあり、新しいものには発見と発想の転換がある。

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一話完結で舞台の一幕物のような設定。登場場面は狙撃地点だけ。第一話は廃倉庫だが、二・三話では、一軒家の和室、マンションの一室。それに合わせて、時村の扮装も、ゴルフケース背負った休日のサラリーマン、バイオリンケースを抱えた音楽家と変わる。さすがプロフェッショナル。ターゲットの潜む建物など、外の様子は全く映らない。ネットで入手出来る様子と交信、時村と早川の会話で、外の様子を想像する。低予算で知恵を絞ったドラマは好きだ。

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最近、報道番組のメインキャスターから新型コロナが感染拡大したことがあった。原因となったアナウンサーは43歳。昭和生まれだけど、平成入社。時村と違って、スマホも普通に使いこなせるだろう。それでも、「 オレがやらなきゃ 」 の責任感に捉われる。彼に悪気が無かったことは分かる。しかし、「 無症状でも感染させる恐れ 」 「 発熱した時は隔離が必要 」 と番組内でも言っていたはず。頭では分かっていたはずなのに、仕事人間の呪縛から逃れられない。

「 日本人は働き過ぎ 」
昔から、うんざりするくらい言われているのに、変わらない。欧米と比較して、具体的な数値で働き過ぎ、と言われているのに、変わらない。結局、お上が働きかけても、メディアは反発し、民間企業は動かない。何も変わらない。

一つ言えるのは、時村のような人間は往々にしてタフだということ。明らかに仕事が好きなタイプ。自分のペースを知っているから倒れない。長時間労働が苦にならない。問題はそれに基準を合わせる同調圧力があること。さっさと終わったら、さっさと帰る。これが出来れば良いのだけど、タフ上司がいると、なかなか出来ない。JIAは秘密組織だが、良心的な団体。この組織のように予備の人間をすぐに配置してくれる企業もそれほど多くは無い。切り詰めた社員で一人が抱える仕事量も多い。
コロナ禍で仕事の仕方が変わると言われているが、どうでしょう?